近年、デジタル化が進む中で、紙の書類をPDF化する需要が高まっています。企業でも個人でも、大量の紙の書類を効率的に管理したいというニーズは年々増加しており、その解決策としてPDF化が注目を集めています。
紙の書類をPDF化することで、データとしての永続的な保存が可能になり、さらには物理的な保管スペースの削減にもつながります。しかし、ただスキャンしてPDFに するだけでは使い勝手が悪いこともあり 、適切な手順と注意点を押さえる とより便利です。
本記事では、紙の書類をPDF化する具体的な手順から、PDF化するメリット、そして実際の作業で気をつけるべきポイントまで、詳しく解説していきます。PDF化の作業に不安を感じている方も、この記事を参考にすることで、効率的にデータ化を進めることができるようになります。
スマートフォンやスキャナーを使った基本的なPDF化の方法から、文書の見栄えを損なわないためのコツまで、段階を追って説明していきます。
- ・この記事を読んで分かること
紙の書類のPDF化手順、PDF化で得られるメリット、PDF化する際の注意点とコツ
WordやExcelをPDF化する方法
書類をPDFファイルにする方法として、Word(ワード)やExcel(エクセル)、あるいはその他システムで作成した文書を、紙ではなくPDF形式で出力する方法があります。
WordやExcelのファイルは、閲覧するデバイスや使用しているWord・Excelのバージョンが異なる場合、レイアウトが崩れて意図しない表示形式になることがあります。
その点、WordやExcelで作成したデータをPDFファイルに変換してから共有することで、意図したレイアウトのまま共有することができます。
WordやExcelで作成した文書をPDF出力する際は、以下の手順でPDFファイルを出力します。
- 1. WordもしくはExcelで作成済みの書類のファイルを開く
- 2. 画面左上部にある「ファイル」をクリック
- 3. 画面左にある「エクスポート」をクリックし、「PDF/XPSの作成」をクリック
- 4. PDFファイルの保存場所とファイル名を選択し、「発行」をクリック
- 5. 作成した文書のPDF出力が完了
書類をPDFにするやり方
紙の書類をPDF化する作業は、適切な機器とソフトウェアがあれば簡単に行うことができます。まずは、PDF化に必要な基本的な道具について説明していきます。
PDF化に必要な主な道具は、スキャナーとPDF変換ソフトウェアです。スキャナーは紙の書類をデジタルデータとして取り込むための機器です。一般的な家庭用や小規模オフィス向けのスキャナーは、比較的手頃な価格で購入することができます。PDF変換ソフトは、スキャンしたデータをPDF形式に変換し、必要に応じて編集するためのツールです。代表的なソフトウェアとしては、Adobe Acrobat DCがよく使用されています。
また、作成したPDFデータを安全に保管するために、外付けHDDなどのストレージも用意しておくと安心です。最近は大容量の外付けHDDも手頃な価格で手に入るようになっており、たくさんの書類データを保存することができます。これらの機器やソフトウェアは、書類の量や使用頻度に応じて選択することをおすすめします。
PDF化の作業時間については、初めての方でも少し練習すれば慣れてきます。コツをつかむことで作業時間も短縮でき、効率的な書類管理が可能になります。これから具体的な手順について、順を追って説明していきます。
Step1.紙の書類をスキャンする
スキャナーを使用して紙の書類をデータ化する作業は、PDF化の最初の重要なステップです。スキャン作業を始める前に、書類にホチキスや付箋がついていないか確認し、取り外しておきましょう。また、書類の汚れやシワがある場合は、できるだけ綺麗な状態にしておくことをおすすめします。
スキャナーには、1枚ずつ手動でスキャンするタイプと、自動原稿送り装置(ADF)が付いているタイプがあります。ADFは複数の書類を連続してスキャンできる機能で、大量の書類をPDF化する際に便利です。
スキャンの手順は以下の通りです。
- ・スキャナーの電源を入れる
- ・スキャン設定を確認する(カラー/モノクロ、解像度など)
- ・原稿の表裏と向きを確認してセットする
- ・スキャン開始ボタンを押す
原稿は必ず表を上にして、文字が正しい向きになるようにセットしましょう。複数枚の書類をスキャンする場合は、サイズや向きを揃えておくことで、作業がスムーズに進みます。スキャンした画像が暗すぎたり明るすぎたりする場合は、スキャナーの明るさ設定を調整してから再度スキャンすることをおすすめします。
Step2.スキャンしたデータの確認
スキャンしたデータは、PDF化の前に必ず確認作業を行う必要があります。確認作業は、パソコンの画面上で拡大表示しながら行うことをおすすめします。
確認時のポイントは以下の通りです。
- ・解像度は適切か(文字がぼやけていないか)
- ・画像が傾いていないか(真っ直ぐスキャンされているか)
- ・汚れや影が写り込んでいないか(余計な影や汚れがないか)
- ・文字がはっきり読めるか(特に小さな文字に注意)
- ・ページの順序は正しいか(書類が順番通りか)
- ・余白の範囲は適切か(必要な情報が切れていないか)
問題が見つかった場合は、スキャナーの設定を見直してから再スキャンを行います。例えば、文字がぼやけている場合は解像度を上げる、画像が暗い場合は明るさを調整するなど、問題に応じた対応が必要です。特に文字の判読性は重要で、後からの修正が困難になるため、この段階でしっかりと確認することをおすすめします。
一度に大量の書類をスキャンした場合は、全ページを確認する時間を十分に確保しましょう。確認作業は丁寧に行うことで、最終的なPDFの品質が大きく変わってきます。
Step3.PDF形式で保存
スキャンしたデータをPDF形式で保存する際は、用途に応じて適切に保存することが重要です。
特に、PDF化して保存場所が分からなくなるといったことが無いように、ファイル名は「YYYYMMDD_文書種類_文書番号」という形式で付けることをおすすめします。
例えば、「20240119_請求書_001.pdf」のような形式です。この命名規則を採用することで、後からの検索や管理が容易になります。
また保存したPDFファイルは、すぐにプレビューで開いて内容を確認することをお勧めします。これにより、保存時の不具合を早期に発見することができます。
書類をPDFに変換するメリット
紙の書類をPDF化することで、企業でも個人でも多くのメリットを得ることができます。ここでは、PDF化による具体的なメリットについて説明していきます。
最も分かりやすいメリットは保管の効率化です。紙の書類は場所を取るだけでなく、経年劣化や災害のリスクもあります。PDF化することで、大量の書類をパソコンやクラウド上にコンパクトに保存でき、劣化の心配もありません。
また、情報の共有や検索が容易になります。PDF化した書類は、必要な時にすぐに探し出すことができ、メールでの送信も簡単です。複数の人が同時に同じ書類を確認することもできるため、業務の効率化にもつながります。
さらに、紙の使用量を減らすことで、印刷コストの削減だけでなく、環境への負荷も軽減できます。特に大量の書類を扱う場合は、印刷や保管にかかる費用が大きく削減できます。
セキュリティの面でも、PDF化には利点があります。電子化した書類にはパスワードを設定でき、アクセス権限の管理も可能です。また、データのバックアップを取ることで、災害時の情報喪失も防ぐことができます。
このように、PDF化は書類管理の効率化、コスト削減、環境配慮、セキュリティ強化など、様々な面でメリットをもたらします。
それぞれの詳細については次項で解説していきます。
データの長期保存が可能
PDFデータによる長期保存は、紙媒体での保管と比べて多くの利点があります。紙の書類は時間の経過とともに劣化しますが、PDFデータは適切に保管すれば、そのような心配はありません。
PDFデータを長期保存する際は、複数の保存場所を確保することが重要です。例えば、パソコンのハードディスクに保存するだけでなく、外付けハードディスクやクラウドストレージにもバックアップを取っておきましょう。こうすることで、機器の故障や災害発生時にも、大切なデータを守ることができます。
また、PDFデータは、保存時にフォルダ分けを行い整理しておくことで、必要な時にすぐに探し出すことができます。データには分かりやすい名前を付け、日付やカテゴリーごとにフォルダを作成して管理することおすすめします。
セキュリティ面では、重要な書類のPDFにはパスワードを設定することができます。特に個人情報や機密情報を含む書類は、必ずパスワード保護を行いましょう。
さらに、クラウドストレージを利用すれば、自動バックアップ機能や複数の場所からのアクセスが可能になります。これにより、より安全で効率的なデータ保存を実現できます。保存したデータは定期的にアクセスし、正常に開けることを確認しておくと良いでしょう。
物理的な保管スペースの削減
PDF化による保管スペースの削減効果は非常に大きいです。
例えば、ダイソーが販売している「すっきり書類収納ファイルA4 M」はコピー用紙を160枚保存できます。幅が約30.7cmになるので、10個(1,600枚)をPDF化することで、約307cm (約3.07m)も、スペースを確保できることになります。
このように、PDF化によって物理的なスペースを大幅に削減できることが分かります。特に都心部のオフィスでは、スペース削減による賃料削減効果は非常に大きいものとなります。
印刷・配送のコストダウン
PDF化によって得られる印刷・配送に関するメリットについて説明します。PDF化することで、印刷や郵送にかかるコストだけでなく、業務の効率化も実現できます。
印刷に関する手間と時間を大きく削減できます。従来は書類を印刷し、内容を確認し、修正があれば再度印刷するという作業が必要でした。PDF化することで、画面上で確認や修正ができ、必要な時だけ印刷すればよくなります。
また、書類の配布方法も大きく変わります。これまで郵送や手渡しで配布していた書類を、メールでの送信やクラウドでの共有に切り替えることができます。受け取り側も印刷の手間が省け、すぐにデータとして保存できます。
さらに、環境への配慮という観点からも重要な取り組みとなります。印刷物の削減は、紙の使用量を減らすだけでなく、インクの消費も抑えることができます。配送に伴う環境負荷も減らすことができます。
このように、PDF化は印刷や配送にかかるコストと時間の削減だけでなく、業務の効率化や環境負荷の低減にもつながります。特に在宅勤務が増えている現在、場所や時間を問わずに書類を共有できるPDF化のメリットは、より重要性を増しています。
書類をPDF化する際の注意点
PDF化作業を効率的に進めるためには、事前の準備と適切な設定が重要です。ここでは、PDF化する際の重要な注意点について説明します。
まず、スキャンする前に書類の状態を確認しましょう。書類にホチキスや付箋は付いていないか、破れや折れ目は無いか、きちんと確認することが大切です。これらの不備は、スキャン時のトラブルの原因となります。
次に、スキャナーの設定を確認します。特に重要なのは解像度の設定です。解像度が低すぎると文字がぼやけて読みにくくなり、高すぎるとファイルサイズが大きくなりすぎてしまいます。一般的な書類であれば、300dpi程度の解像度が適しています。
また、原稿の置き方にも注意が必要です。斜めに置いてスキャンすると、PDF化の際にレイアウトが崩れる可能性があります。原稿は必ずスキャナーの基準に合わせて真っ直ぐにセットしましょう。
カラー文書の場合は、モノクロでスキャンするか、カラーでスキャンするかの選択も重要です。写真やグラフなど、色の情報が重要な場合はカラーでスキャンしましょう。文字中心の書類であれば、モノクロでスキャンすることでファイルサイズを抑えることができます。
これらの設定を一度確認し、適切に設定しておけば、その後のPDF化作業をスムーズに進めることができます。
解像度の設定
PDF化する際の解像度設定は、スキャンした文書の品質とファイルサイズに大きく影響します。解像度とは、画像の細かさを表す単位で、一般的にdpi(1インチあたりのドット数)で表現されます。
解像度は、スキャナーのソフトウェア設定画面で変更できます。カラー文書の場合は、解像度に加えてカラー設定も重要です。一般的な文書であれば、300dpiのモノクロ設定で十分な品質が得られます。
スキャン後は、PDFを開いて文字のクリアさを確認しましょう。文字がぼやけている場合は解像度を上げ、ファイルサイズが大きすぎる場合は解像度を下げるなど、必要に応じて調整することをおすすめします。
レイアウトの崩れに注意
レイアウトの崩れは、PDF化する際によく発生する問題の一つです。特に注意が必要な書類と対策について説明します。
レイアウト崩れが起きやすい書類 |
---|
表組みのある文書 |
図表や写真が混在する文書 |
複雑なレイアウトの文書 |
手書きメモが付いた文書 |
これらの書類をスキャンする際は、原稿の傾きに特に注意を払い、必要に応じて解像度を上げるなどの対策を取ることが重要です。
詳細にPDFを編集したいなら「いきなりPDF」がおすすめ
例えば、PDFのレイアウトが崩れてしまうことは、スキャン時の原稿の傾きや、異なるサイズの書類が混在している場合によく発生します。また「この文字だけ修正したいのに、、」「このページいらないけどどうにかならないかな」など、このような問題を簡単に解決できるツールとして、「いきなりPDF」がおすすめです。
「いきなりPDF」の最大の特徴は、直感的な操作性です。文字の修正は直接クリックして編集でき、レイアウトの調整はドラッグ&ドロップで簡単に行えます。ページの追加や削除も、メニューから数クリックで完了します。これらの操作は、パソコンの基本的な操作ができる方なら、すぐに使いこなすことができます。
1例として、無料版アクロバットリーダーといきなりPDFの機能にどんな違いがあるのか確認してみましょう。
機能 | いきなりPDF <COMPLETE> | Adobe Acrobat Reader <無料版> |
---|---|---|
ファイルをPDF化 | ○ | ー |
ページの分割、結合、削除 | ○ | ー |
Officeファイル形式に変換 | ○ | ー |
注釈、しおり、マーカー | ○ | △ |
既存のテキストや画像を編集 | ○ | ー |
自動認識しテキストボックスを作成 | ○ | ー |
PDFに電子署名を捺印 | ○ | ○ |
はんこ・デート印の押印 | ○ | ー |
テキストや画像の抽出 | ○ | ー |
パスワード設定 | ○ | ー |
差分の比較 | ○ | ー |
タイムスタンプ | ○ | ー |
フォーム作成 | ○ | ー |
ガイドムービー | ○ | ー |
法人の場合は、無料で試用できる体験版も提供されてますが、今回は比較としてよく使われる無料版サービスのAdobe Acrobat Readerを比較としてまとめています。無料版で提供される機能は少なく、何よりファイルをPDF化することはAdobe Acrobat Readerではできません。
ただし、有料版の「Acrobat Pro」や「Acrobat Standard」であればファイルのPDF化が可能で機能面もとても充実しています。「いきなりPDF」と有料版を比較した場合も機能の多さで比較した場合は、「Acrobat Pro」や「Acrobat Standard」の方が充実しているようです。
価格面では、「Acrobat Pro」と「Acrobat Standard」どちらも年間18,000円以上ですが、「いきなりPDF」の場合は、比較表にある「COMPLETE」で10,890円(税込)でずっと使い続けれることができます。
上記の比較表に記載される機能で十分という方であれば、コストパフォーマンスを考慮した場合に「いきないPDF」を購入した方がお得でしょう。
「Acrobat Pro」や「Acrobat Standard」の機能をもっと詳しくみてみたい方は、こちらから確認してみてください。
他にも様々なソフトウェアがありますので複数検討した上で機能性や価格面を考慮して購入するか検討することをおすすめします。
まとめ
ここまで、書類のPDF化について、具体的な手順からメリット、注意点まで詳しく説明してきました。最後に、PDF化の重要なポイントをまとめておきましょう。
PDF化の作業手順は大きく分けて3つのステップがあります。
まず、書類をスキャンしてデータ化します。次に、スキャンしたデータの品質を確認します。最後に、確認したデータをPDF形式で保存します。この基本的な流れを押さえることで、効率的に作業を進めることができます。
作業を始める前の準備も重要です。スキャナーの解像度設定を確認し、データの保存先フォルダを用意しておきましょう。また、大切な書類は必ずバックアップを取るようにします。
書類は種類ごとに整理し、作業手順を確認してから始めることで、スムーズにPDF化を進めることができます。
PDF化の大きなメリットは、データの長期保存が可能になることです。また、保管スペースが大幅に削減でき、印刷・配送コストも抑えられます。特に大量の書類を扱う場合は、業務効率の大幅な向上が期待できます。
PDF化は最初は少し手間がかかりますが、慣れてくれば簡単な作業になります。まずは身近な書類から少しずつ始めてみることをおすすめします。本記事で紹介した手順や注意点を参考に、ご自身に合ったペースでPDF化を進めていってください。